頻回授乳地獄

出産後の疲れもとれぬまま

恐怖の授乳地獄が始まる。



腰が痛くてふつうに歩けない。

尻が痛くてふつうに座れない。


一昔前のロボットのような動きをしながら

血の巡りの悪そうな顔をして

赤ん坊が泣く度、

おむつをかえて

乳汁を与える。



しかしこの乳汁が問題だ。

最初の数日は、満足にでない。

赤ん坊泣く。

寝ない。寝れない。

あせる。疲れる。

粉ミルク足す。夜間ねる。

夜間、乳を吸わない。乳汁の分泌増えない。



この、恐怖の連鎖に飲み込まれないため

3食昼寝付きの入院中に

なんとしても片乳10分ずつで

3時間おきの授乳サイクルを

確立して退院するのが

目標だった。



分娩当日は、ハイでまったく眠れず

翌日13時から始まった授乳に

その日はそこから24時間、

出ない乳をひたすら吸わせた。


おちょぼ口の赤ん坊と

出ない乳の融合は、

乳首の裂傷という悲劇しか生まない。


しかし、ここでくじけると

頻回授乳をしてきた苦労が水の泡だ。


毎回、かみつき亀に指を食いちぎられる
ような痛みを感じながら授乳をし、

乳汁の分泌量に手応えを感じてきた頃、

ふと思った。



1ヶ月も吸われて鍛えれば、
乳首は痛くなくなる。

赤ん坊も慣れてうまく吸えるように
なれば、痛くなくなる。


なんてマッチョなことしか書いてない
本を鵜呑みにするのではなく、

痛みを減らすために具体的に
動こう。


こんな当たり前のことに
気づいたのは
退院後、しばらく経ってからだ。


それくらい、自分のことが
どーでもよくなっているのが
産褥期ってやつだ。



授乳時のラッチオン(くわえさせ方)

これはもう技術である。

ここで赤ん坊の口を最大限に開けさせ

乳に押し付けるくらい強く

乳房に引き付ける。

え、こんなに手荒いの?ってくらい。


授乳中も首をつかんだまま、

この状態をキープする。


これで、浅く乳首を噛まれて

傷を負わないようにするのだ。



切れた乳首は、湿潤法で治す。

つまり、胸にラップを貼る。


初産婦さんには衝撃である。


私は、経産婦でありラップ療法は

知っていたが、しぱらくは

なにもせず激痛に耐えていた。



退院後、このままでは痛すぎて

ドMになってしまうと思い

ネットで羊の油を買って塗り

ラップをしたところ

一週間で強靭な乳首を手に入れた。



と、ここまで打って

あたし何回乳首って打ってんだ、と

愕然とするも、


おそらく

産褥期の衝撃をかいた

「ママだって人間」 たぶさえいこ著

というマンガを読んだからだと

思っている。



とりあえず、母乳サイクルを勝ち取り

退院後から赤ん坊は1キロ増えている。

これだけで、達成感がかなりある。

一人目のときには、できなかった。


できなかったのではなく、

情報に翻弄され、初期の行動を

でなくても吸わせまくる

という限定的な作業を逸したため

出遅れたとも言おうか、

惜しいことをした。



母乳にこだわるタイプでは

まったくないが

究極のところ、母乳は

ひたすら吸わせて分泌量をあげる

しかない。



どんなになんとか式マッサージを

やろうが、ハーブティーのもうが

ひたすら、特に夜中に吸わせないと

分泌量は増えない。



負のスパイラルに入り込まないために

1ヶ月きっちりお付き合いするしか

ないのである。


これで軌道に乗らなきゃ、

すっぱりやめて、

楽しい粉ミルクライフを


スタートさせればいいのだ!